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<<   作成日時 : 2008/03/23 01:27   >>

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以前、「羽生善治×松原仁」対談を見に行ったんですが、
その直後に買った「ボナンザvs勝負脳」を最近読みました。

ボナンザ開発者の保木氏とボナンザと対局した渡辺明氏が
それぞれの対局までの流れを個別に書いた章、
対談を収めた章、対局から再び各々が思うところを述べた章とがあり、
熟達者と人工知能との違いが対比しやすくなってます。

このボナンザvs渡辺竜王の対局は確かに
考えさせられるところが多々あるように思いました。
将棋にも人工知能にも深入りしていない開発者、
それゆえに実装された従来の常識の逆をいく探索方法、
それによって実現された熟達者相手の接戦、
それでいてなおも立ちはだかる人間と機械との薄いようで分厚い壁。
特に畑の違う化学の研究者が本職にも劣らないものを作ったことは
驚き半分、納得半分の印象でした。

強いプログラムを作るための常套手段が少しずつ発展を積み重ねていく中で、
根っこの部分から違うアプローチ(このボナンザの場合は全幅探索)が
放置されている現状は、門外漢からすれば
特に奇妙に映ったのだろうな、と思います。
特に勇気を振り絞って違う路線に行った、というよりも、
なぜか手がつけられていない、という印象から
選ばれた方法だったことが読み取れます。
知り尽くした情報通が革新的なアイデアを得るわけではない、
ということでしょうか(先日の月例研究会で聞いた話ですが)。

また、対局した渡辺竜王の記述もおもしろく、読んでいると
一般には「冷静」といった言葉が添えられそうなコンピュータが、
冷静とはほど遠い向こう見ずな奴のように思えてきます。
計算機は読み違いやそれによる徒労を恐れない、無駄を厭わない。
制限時間からの精神的なプレッシャーなんてものもない。
虱潰し上等で探索しまくるコンピュータは、
ある意味無鉄砲でボトムアップ主導な態度に見えてきます。
(それでいて昨今のビジネスマン向けの問題解決本なんかをみると、
「現状でできること」から考えるボトムアップ思考を
批判していたりするのがまた皮肉な感じで面白い)

シンプルな一発勝負の色がある判断や推論の課題だと
人の挙動は規範から逸脱するとかしてないとか議論されますが、
将棋のような究極的なゴールの見通しが立たない世界、
判断の積み重ねによる問題解決状況では
(熟達者限定ですが)人が優れた処理をしているという見方で
だいたい一致している。
膨大な探索空間や長大なスパンで展開される問題状況での
(それでいてタイムプレッシャーにさらされる中での)、
人間のなせる技やその技を習得できるメカニズムに
改めて感心してしまいます。

ボナンザと竜王の差異、ボナンザ開発者の背景の両方の点から、
人間と機械の違いや、熟達について考えされられました。

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